ディープインパクトの後継種牡馬について考える。ディープの血は繋げることができるのか?
ディープインパクトの死が日本競馬界に与えた影響は計り知れません。
7年連続でリーディングサイヤーに輝いた圧倒的な王者がいなくなったことで、今後の種牡馬の争いはより激化することが予想されます。
また競馬ファンなら誰しもが考えることがディープインパクトの後継種牡馬です。
ここではそんなディープインパクトの後継種牡馬について考えていきます。
※2016年に社台SSで撮影した龍王ロードカナロア。穏やかな表情です。笑
日本競馬としての後継種牡馬
日本競馬ではリーディングサイヤーランキングで毎年上位争いをしてきた、ディープインパクト、キングカメハメハ、ステイゴールドが既に種牡馬として引退しました。
それぞれの産駒がデビューし現役で活躍する数年はリーディング争いに大きな変化は起きないと思いますが、ステイゴールド産駒は既にラストクロップが昨年デビュー済み。
ディープ産駒やキンカメ産駒も2020年以降は徐々に頭数が減りはじめるため、それ以降の種牡馬リーディングはどのような馬が台頭するのか非常に興味深いです。
ここでは日本競馬の未来を支える種牡馬として3頭の馬をピックアップしました。
ロードカナロア
2013年 香港スプリント(G1) ロードカナロア【ラストラン】
2017年に初年度産駒がデビューし旋風を巻き起こしたロードカナロア。
牝馬三冠を達成したアーモンドアイをはじめ、牡馬クラシックを制覇したサートゥルナーリア、3歳にして古馬マイルG1を勝利したステルヴィオなど、2世代で多くのG1馬を輩出しています。
2019年にデビューした3年目の産駒は勝ちきれない馬が多くあまり順調とは言えませんが、種付け料も1500万を超えているため今後は繁殖牝馬の質も一気にあがることが想像できます。
サンデーサイレンスの血を一切持たないことから、キングカメハメハの後継種牡馬としてディープ、ハーツ、ステイゴールドなどのサンデー系の牝馬に種付けできる点も魅力です。
アーモンドアイやサートゥルナーリアなど2000m以上のG1を勝っている馬がいるものの、本質的にはマイルまでの距離を得意とする産駒が多いだけに、それがリーディング争いになったときどこまで影響するかが重要になりそうです。
ドゥラメンテ
2015/04/19 第75回 皐月賞(GⅠ)【ドゥラメンテ】
2015年に牡馬クラシック二冠を達成した超良血馬。
ディープインパクトの3冠達成時の「日本近代競馬の結晶」という名実況を血統面で体現していると言っても過言ではない馬です。
日本ダービー後に骨折が発覚し、翌年の中山記念で復帰するもその後はG1を勝てずに二度目の故障で現役を去ることになりました。
後にG1を7勝するキタサンブラックと3度レースし、一度も先着を許さなかったなど、その競走能力はキングカメハメハの産駒の中でも屈指です。
種牡馬としては初年度産駒が2020年にデビュー予定であるため、まだ実績が未知数な部分はありますが、関係者の評価は非常に高く2019年のセレクトセールでも3頭の億越えが落札されています。
SSの血を持たないロードカナロアに比べるとSS直系の牝馬に種付けすることが難しいものの、ディープインパクト用にノーザンファームが輸入していた海外の豪華繁殖牝馬が周ってくるようであれば非常に面白いことになりそうです。
私個人としてはロードカナロアよりも期待している種牡馬です。
モーリス
2016/10/30 第154回 天皇賞(秋)(GⅠ)【モーリス】
2014年、2015年に活躍した日本歴代最強マイラー。
アジア圏のマイルG1を総ナメにし、キャリア晩年では天皇賞秋や香港カップなどの2000メートルのレースでも抜群のパフォーマンスを披露しています。
馬主はノーザンファーム社長の吉田勝己氏の奥様である吉田和美氏名義であるため、引退後は社台SSに抜群の待遇で種牡馬入り。
初年度に種付けした繁殖牝馬にはブエナビスタ、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナなど錚々たる顔ぶれが並びます。
ドゥラメンテと同じく2020年に初年度産駒がデビュー予定ですが、現在の評価ではドゥラメンテに比べると前評判はややトーンダウンする印象。
2018年のセレクトセールではラスティングソングの2018が1億7000万で落札されるなど一定の評価はされているようです。
ディープインパクトの直系の後継種牡馬
競馬ファンとして非常に気になるもう一つのポイントがディープインパクトの直系の後継種牡馬です。
ディープインパクト自身はサンデーサイレンス晩年の最高傑作として牡馬クラシック三冠などの日本競馬の最高クラスの実績を引っさげて種牡馬入りしました。
しかし
自身の産駒を見ると2019年8月時点では最高傑作と自信をもって言える産駒はでてきていない印象を持ちます。
国内外のさまざまなタイトルを獲得したジェンティルドンナクラスの牡馬が輩出できれば、後継種牡馬問題は解決したかもしれませんが、現状は質より量という形で血を繋げていくことになりそうです。
キズナ
2013年に開催された日本ダービーで武豊とともに劇的な勝利を飾ったダービー馬。
個人的には非常に思い入れのある馬ですが、その後は怪我などもあり、G1を勝つことはなく現役を去りました。
初期のディープ産駒の中では後継種牡馬のエース格とされており、2019年に初年度産駒がデビューしました。
勝ち上がり率も決して悪くはなく、函館2歳Sではビアンフェが初重賞を勝つなど種牡馬としては上々の立ち上がりです。
種牡馬として結果を残す上で非常に大切なノーザンファームの種付け数が比較的少なめである点が少々気がかりですが、ディープインパクトの死後、繁殖牝馬がどの程度回ってくるかが鍵になりそうです。
サトノダイヤモンド
2016/10/23 第77回 菊花賞(GⅠ)【サトノダイヤモンド】
3歳で菊花賞と有馬記念を制覇するなど、実績だけで見ればディープ産駒の中でも最上位クラスの1頭。
凱旋門賞挑戦後は競走馬としてのキャリアを高められたとは言い難いですが、社台SSに入ることができたため、後継種牡馬として最低限のポジションはキープした印象です。
産駒の評価については未知数ですが、3歳時点での実績とディープ産駒の中でもトップクラスの馬体を見ると種牡馬としても期待したいです。
個人的には2016年のクラシックは非常に楽しませてもらったため、種牡馬としても結果を残してもらいたいです。
エイシンヒカリ
気性激しい逃げ馬としてディープインパクト産駒の中では異色の競争成績を残したエイシンヒカリ。
国内G1では2度の天皇賞で惨敗することになりましたが、香港カップとイスパーン賞で見せた走りは種牡馬としても非常に期待したくなる圧巻のパフォーマンスでした。
社台SSではなく、レックススタッドに繋養されているため、他の後継種牡馬に比べるとやや不利な状況な否めませんが、非社台系でディープの血を繋ぐ可能性があるとすればこの馬です。
現役馬を含めて多くの後継候補が
ディープ産駒に関して言えば、今回紹介した馬だけでなく非常に多くの産駒が種牡馬として繋養されています。
2019年に初年度産駒がデビューし、新種牡馬リーディングでも結果を残しているリアルインパクトをはじめ、ドバイターフを制した良血馬リアルスティール、マイル路線を中心に活躍したミッキーアイルやサトノアラジンなど社台SSだけでもこれだけの後継種牡馬がいます。
また現役にもマカヒキ、ワグネリアン、ロジャーバローズなどのダービー馬、重賞では圧倒的なパフォーマンスを見せているダノンプレミアムなど、後継争いに加わる産駒は非常に豊富です。
もちろんまだ未デビューの馬の中にもこれらの馬を上回る最高傑作がいる可能性も否定できませんしね。
日本競馬の血統図が激変するか!?
ディープインパクトがこの世を去ったことで、日本競馬における種牡馬争いは間違いなく激化することが予想されます。
正式な後継馬が見つけられない社台SSが海外から新たな種牡馬を輸入する可能性も否定できませんし、予想するのは馬券を買う並みに困難です。笑
私個人としてはサンデーサイレンス死後のアグネスタキオンのようなイメージでドゥラメントを被らせてしまいますが、皆さんの予想はどうですか?
さまざまな意見を募集しています!
ディープインパクトのラストクロップはどの馬?最終世代について考えてみた
日本にいる競馬ファンの多くが悲しみに暮れた7月30日。
ディープインパクト死亡のニュースが駆け巡りました。
私自身もディープインパクトの三冠レースは競馬ファンになる以前からしっかりと記憶に残っている数少ないレースの一つであり、凱旋門賞や2回の有馬記念は今でも鮮明に覚えています。
私の心に深く刻まれている伝説の2013年日本ダービー。
実力馬の凌ぎ合いに心踊った2016年の牡馬クラシック。
これらの主役であったキズナ、マカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティなどはすべてディープインパクトの産駒でした。
もちろんディープインパクトが競争馬、種牡馬として日本に残してきた功績はこれだけに留まらず、数多くの名レース、名馬、名牝を日本競馬に送り出してきました。
日本競馬界はしばらく”ディープインパクトの死”で一色になってしまうと思いますが、ここで残されたディープインパクトの血を受け継ぐ馬のことについて考えてみたいと思います。
※写真は2016年に社台SSで撮影したディープインパクトの写真。
ディープインパクトの残る世代は2世代
ディープインパクトの産駒は今年デビューした産駒を除くと残り2世代。
昨年種付けされた2018年世代は197頭の繁殖牝馬に種付けがされていますが、出産頭数については現時点で明確な数字はわかりません。
今年種付けされた世代については3月にディープインパクトの首の痛みを理由に種付けを中止しているため、種付けされた繁殖牝馬の数は24頭と言われています。
ディープインパクトの晩年の産駒については種付け料のアップによって日本の繁殖牝馬だけでなく、海外の一流の繁殖牝馬が来日して種付けを行なっているため、これらの産駒の中で無事に日本で競争馬としてデビューする馬の数は非常に少なくなることが予想されます。
日本で種付けを行なった繁殖牝馬はなんと4.5頭!?
この記事を書いている際に非常に興味深い記事を見つけました。
競馬ファンでSNSをやっている方にはお馴染みの次走報さんが引用ツィートした社台SS徳武さんのコメントです。
ディープインパクト、今年の種付け頭数は24頭だけ。海外の繁殖牝馬が半数以上を占め、徳武氏は「日本で生まれるのは4、5頭ぐらい」との見解を示した。亡き父の遺志を受け継いだラストクロップは、順調なら22年夏にデビューする。https://t.co/atoSgTuruw
— 次走報 (@Jisou_hou) July 31, 2019
なんと日本で生まれるディープインパクトの最終世代は4.5頭というのです。
もちろん競争馬の世界は生まれた馬がすべて健康に育ってデビューするわけではありませんので、この中の何頭がディープインパクトのラストクロップとして日本のターフを走るのでしょうか?
ディープインパクトの最後の遺伝子を受胎している繁殖牝馬の情報などは現在まだ出回っていませんが、この中の産駒にノーザンファームの繁殖牝馬がいるとしたら・・。
その馬が牡馬でセレクトセールで取引されることになるとしたら・・。
果たしてどんな金額で落札されるのでしょうか?
ちなみにディープインパクト産駒の最高額落札馬については2017年にセレクトセールに上場されたイルーシヴウェーヴの2017。
落札額は衝撃の6億2640万円で当歳の牡馬では歴代最高額となっています。
奇しくもこのイルーシヴウェーブの2017は今年新馬としてデビューする予定です。
名前はアドマイヤカストルでしたが、オーナー側の都合で今月急遽名称がアドマイヤビルゴに変わっています。
今年注目の2歳馬の中ではデビューの目処はたっていないようですが、残された数少ないディープインパクト産駒として衝撃のデビューを飾ってほしいです。
ディープインパクト亡き令和の日本競馬
ディープインパクトは種牡馬として7年連続でリーディングサイヤーに輝き、産駒のG1勝利数は50勝を超える日本競馬史に残る種牡馬です。
ディープインパクトの死という悲しみに暮れると同時に、競馬ファンの皆さんは次のリーディングサイヤーの栄冠をどの馬が掴むのか気になると思います。
今年はディープインパクトと同じく日本の競馬史に残る種牡馬成績を残したキングカメハメハの種牡馬引退も発表されています。
オルフェーヴルやゴールドシップなどの名馬を輩出したステイゴールドは2015年にこの世を去っており、ラストクロップは昨年末に既にデビューしています。
2019年7月末時点での種牡馬リーディングではTOP3に輝く馬が既に種牡馬としての現役を終えた令和元年。
日本競馬はいったいどのような方向に向かうのか。
ディープインパクトの死は非常に悲しいですが、これからはじまる新しい日本競馬の展望を考えると不思議とワクワクした気持ちにさせてくれます。
ディープインパクト亡き日本競馬の皆さんの展望をぜひお聞きしたいです。